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2005年03月02日

予算編成を骨格予算にしなかった理由について(2005年2月議会)

◎斎藤亮人議員
 平成17年度の予算編成において、市長は骨格予算を組まれませんでした。しかし、通常政治の世界の常識では、選挙直前の予算編成になる場合は骨格予算を組むというのが通例であります。新たに市民から選ばれた人に予算編成をする余地を残すために骨格予算にするからであります。
 幾つかの例を挙げてみます。平成15年4月に行われました三重県知事選挙に際しまして、立候補を取りやめた北川知事は、15年度予算を一般会計で前年比7.6%減の予算で組みました。そのときの予算の提案説明において、当時の北川知事は、新しい価値創造に係る政策判断については、新しい知事にゆだねたと述べました。この場合、北川知事は立候補を取りやめていますので、松原市長の場合とは少し違いますけれども、北川知事はこのような姿勢を示されました。もう1点、松原市長と同じようなケースが、同じく平成15年4月に選挙のあった鳥取県においてであります。再選を目指した片山知事は、年度当初から本格的な予算が組めないということは、ある意味若干の空白期間があったり、本来やるべきことがちょっと停滞するという面は否めないが、予算編成のエチケットとして、選挙が終わるまでは新規、大規模なようなものは控えると記者会見で述べておられます。このように一定の見識を示されているわけです。
 私は、選挙情勢がどうであろうと、市民からの審判を受ける前は骨格予算にするのが政治家としての品のある姿勢ではないかというふうに思います。確かに政治は現実というものがあって、さまざまな争いや妥協というものはせざるを得ないというのは確かであります。しかし、政治家としての品格を持った政治姿勢こそが真に市民から信頼を得られる政治をつくり出すと思うのです。
 また、4月の選挙に向けて松原市長は、基本政策であるマニフェスト21を示されました。最近では、国政選挙における政党の主張が具体的な数字などを盛り込まれて主張される。また、公職選挙法も改正され、このようなものが国政選挙においては配布が可能になっているわけであります。その意味で、選挙におけるマニフェストの重要性の認識というものが広がりつつあると思います。
 地方自治体の首長選挙においてもマニフェストが示されることが多くなりまして、この2月には、ローカル・マニフェスト推進首長連盟というものも結成され、知事16名、福岡市、川崎市、横浜市などの政令市などの市長を初め、152名の首長の方々が参加されています。マニフェストを示すのは、広く有権者に自分の政策を提起し、みずからの政策を明確にするプロセスの一環として位置づけられていると思います。だからこそ選ばれた市長は、マニフェストに従って責任を持って施策を実施していくことになるわけです。
 以上のような理由から、私は平成17年度予算は骨格予算にすべきだと思います。なぜ今回骨格予算を組まなかったのか、市長の考え方を伺いたいと思います。
 
◎松原武久市長
平成17年度の予算編成に当たりましては、安心・安全をささえあうまち、環境と個性のとけあうまち、人と産業をはぐくむまちの三つを重点テーマとして、未来への布石、協働性、そして緊急性の三つの視点から、限られた財源を効率的、重点的に配分することによりまして、名古屋新世紀計画2010の第2次実施計画を着実に実行して、生活、環境、文化、産業のすべての分野にわたって調和のとれた誇りと愛着の持てるまち・名古屋の実現を図ることとしたわけでございます。
 とりわけ本市が直面しております課題、例えば次世代の育成支援、安心・安全・快適なまちづくり、あるいは地震対策の基盤づくり、そして交通戦略、産業の創出・活性化など、一刻の猶予も停滞することもなく、適時適切に対応していくことが市政を運営する上での基本との考え方に立ちまして、現時点で見込み得るものはおおむね当初予算に計上したところでございます。よろしく御理解を賜りたいと存じます。

◎斎藤亮人議員
まず、市長の方にもう一度伺いたい。御理解をお願いしたいというふうに言われましたけれども、しかし、今市長は一刻の猶予、停滞は許されないんだというようなことで骨格予算にしなかったんだという答弁をされました。
 確かに次世代育成対策や児童虐待の問題、災害対策ということは、確かにそういう面があります。また、こういうことについては、病後児保育の問題にしましても、委員会や本会議の中で何度も議論をされてきたことであります。例えば30人学級にしましても、4月からできなくて学年の途中から急に30人学級になるというのでは、やっぱり都合が悪いし、混乱するだろうというようなこと。それから、例えば障害者の問題でいいますと、中高生の障害児放課後支援事業というのがありますけれども、こういったものは既に概算要求等で国がもう施策を打ち出していたものというようなもので、こういったものを当初予算に盛り込んでいくということについては、一定程度理解ができるわけであります。
 しかし、今回の予算と、それから市長のマニフェスト等見させていただきますと、東山動植物園再生プラン策定に1000万円、地域密着型ビジネス創業支援施設の整備に2500万とか、NPO活動支援施設に2500万、産業技術未来博物館構想の基礎調査に500万などが新しく新規事業としてのっているわけですけれども、これは果たして本当に今言われました一刻の猶予も停滞も許されない事業なんでしょうか。これは、この今の市長の答弁では全く説明ができないと思うんです。もちろん額が少ないからこれはもういいんだということでは、私は済まされないと思います。
 といいますのも、市長のマニフェストには、若干なぜか字句が違うわけですけれども、産業技術未来博物館構想に当たるものに産業未来博物館とか、東山動植物園再生プランに当たるだろうと思われる野生体感型動植物園というものがマニフェストに登載されているわけであります。このような手法というのは、私は余りいい方法ではない、禁じ手のようなものではないかと思うんです。マニフェストが先に出され、そしてその後に予算編成が来るということであります。今話題の新株予約権のようなことかもしれませんけれども、しかし、私は、まずこういった今言ったような事業については、とりあえず予算を修正して取り下げて、選挙後に新たに提案したらどうかと思うんです。
 例えば、私もこの東山動植物園の再生プラン、これはなかなかおもしろい。しかし、これはいろんな意見がある。また、市民からいろんな意見も聞けばいい。こういったようなことを考えるわけです。例えば本陣小学校の使い方にしても、このNPO等の施設として使うという話になっているわけですけれども、私などだったら、もっと福祉のスペースとして使えないだろうかとか、産業技術未来博物館というのは本当にこれは必要なものなのだろうかと、いろいろ思ったりするわけであります。こういった議論を逆に選挙の中で、市民の中で広く議論をしていく。そして、その結果を施策に反映させるという方がいいんじゃないかと思うんです。そういった意味で、もう一度今言ったような施策が本当に一刻の猶予もないものなのかというようなことについて、市長に再度質問したいと思います。
 
◎松原武久市長
何度も御質問いただいてまことに恐縮でございますが、平成17年度予算につきましては、先ほど申し上げたとおり、名古屋新世紀計画2010の着実な推進を図るために、可能な限り見込み得る施策を盛り込んだところでございます。これは、第1次、第2次実施計画の延長上の内容でございまして、ポスト万博も視野に入れた今後の方向性を決める上で大切な施策も当然含まれておると、こういうことでございます。
 また、東山動植物園の再生につきまして今お尋ねあったわけでございますが、このことにつきましていえば、例えば、平成15年の7月に策定、公表いたしましたなごや東山の森づくり基本構想におきまして、その基本方針の一つとして位置づけられたものでございまして、また、昨今の他都市の動物園もさまざまな工夫などがなされておりまして、社会の注目も集めているところでございます。本市といたしましても、再整備の必要性を強く感じているところでございまして、こういった状況から、東山動植物園の再生を喫緊の課題としてとらえたわけでございます。
 また、産業技術未来博物館構想についての御指摘もあったわけでございますが、このことにつきましていえば、第2次実施計画の中で産業遺産の保存・活用といったような観点から、名古屋の物づくりの歴史上貴重なものにつきましては、将来にわたり引き継がれていくようにということで、その保存活用についての言及をいたしておるところでございまして、そういったものの延長線上ということで御理解を賜りたいと思います。
 
◎斎藤亮人議員
 やはり私は、今の答弁でも、先ほど最初に言われた一刻の猶予、停滞は許されないというところとはどうしてもつながらないわけであります。マニフェストを掲げていろいろ選挙戦をこれから戦われると思うわけですけれども、そういった時期だからこそ、先ほど他県の知事の例も出しましたけれども、やはり政治家としての政治姿勢をしっかりと節度あるものとして持っていくということが必要だと思うんです。そういった意味で、今の市長の答弁では、残念ながらその点は理解ができません。

投稿者 saito : 00:28

長期的な住宅政策の必要性について(2005年2月議会)

 私は、前回の質問に際しましても、住宅の問題を取り上げました。衣食住と言われるように、住宅の問題は人間が生活をしていくために基本中の基本であるというふうに考えています。だからこそ、自治体において住宅政策がどれだけ充実しているかということが自治体の豊かさを示すのではないかというふうに私は思っています。
 現在名古屋市の住宅政策は、新世紀計画2010に掲載されている住宅部分が該当しています。従来名古屋市には、平成3年から12年の10年間を期間とする名古屋市住宅供給基本計画がありました。その後、平成12年3月の名古屋市住宅対策審議会の答申の内容が2010の計画に受け継がれて、進行管理は現在実施計画でやっていくという仕組みになっています。しかし、私はそれだけでは不十分である、もっと長期的な視点に立った住宅基本計画を名古屋市でも策定したらどうかと、そして、住宅政策を総合的に進める体制をとってはどうかというふうに思うんです。
 平成15年に行われました住宅・土地統計調査の速報によりますと、住宅の総数はその5年前の調査に比べて8%伸びているのに対しまして、空き家は17.7%増加している。名古屋市の1世帯当たりの人員も、平成3年には2.68人だったのが昨年には2.33と13%も減少しています。単身高齢世帯は、国勢調査のたびに四十二、三%の割合で伸びを示しておりますし、単身者向けの住宅は、公営住宅の倍率は平成15年度では49倍。しかし、この5年の単身者向けの住宅の供給戸数は、毎年200戸前後で推移するような状況でしか対応できていません。福祉向けの住宅の倍率においても、障害者世帯の場合、この3年間、10倍前後で推移しています。
 このような状況を打開するには何らかの方策が必要です。民間のストックを有効に活用する施策、住みかえがしやすくなるような施策など、課題は山積であります。また同時に、日本の住宅政策は大きな変動期にあります。今国会には公営住宅法の改正や、また、地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法案が上程されております。そして、18年度中には住宅基本法をつくろうというような形で物事が進んでいるわけであります。
 このような中で議論されている大きな柱に、公営住宅のセーフティーネット機能の役割を果たそう、果たさなければいけない、そういう役割を持たせようということがあります。政府も、子育て世代やDV被害者などの住宅弱者に対してどういうふうに円滑に入居してもらうか、民間活力との連携によって、福祉との連携もやりながら、どうやって入居していってもらうかというような議論が進められているわけであります。
 そういった時代が今進んでいる中で、私はこの名古屋市で住宅基本計画をつくるべきだというふうに思います。政令市の中で、実は住宅基本計画がないのは、大阪市と広島市と名古屋市であります。何も計画をつくればいいというものではないかもしれませんけれども、このように国の動向が大きく変わる。そして、これは急にあらわれたわけではなくて、平成15年から国の審議会等でも新たな住宅政策のあり方が示されている。そういう中であればこそであります。
 そこで、住宅都市局長に、まず、この住宅基本計画の必要性の認識についてどうお考えになっているのか、そして、17年度予算の中で少しでもこの策定に向けての取り組みがなされるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
 
◎住宅都市局長
 まず、必要性について触れる前に、私どもの基本的な考え方をお答えさせていただきたいと思います。まず、住宅は、市民の皆様にとりまして重要な生活基盤でございます。長期的な視点に立って、すべての市民がみずからの努力に応じて良好な居住環境を確保できるようにすることは、市政の重要な課題の一つであるというふうに認識しております。
 本市におきましては、御指摘ありましたように、平成12年3月の名古屋市住宅対策審議会答申を踏まえながら、名古屋新世紀計画2010の部門別計画におきまして、良質な住宅の形成やいきいきとした交流の促進、市民とともにすすめる住まい・まちづくりなどの住宅施策の基本方針を定めているところでございます。これらの基本方針に基づきまして、市営住宅を初めとします公的住宅ストックを活用しました住宅困窮者の居住の安定や住情報提供を通じました市民の適切な住まいの選択の支援などを図ります各種事業を位置づけているところでございます。今後もこれらの基本方針に基づきまして、少子・高齢化や障害者のノーマライゼーション、地球環境問題などに対応する各種施策と連携いたしまして、住宅施策の展開を図ってまいりたいと考えております。
 続きまして、住宅基本計画の必要性についてでございます。これまでも名古屋新世紀計画2010に基づきまして、関連部門と連携しまして諸課題に取り組んできております。また、引き続きこの計画のもと、適切な役割分担と相互連携を図ってまいりたいというふうに考えております。なお、御指摘ありました国におきましては、地域における住宅に関する多様な需要に的確に対応するための新たな特別措置法が今国会で審議される予定だと伺っております。このほかにも、来年の通常国会に向けまして住宅建設計画法など、これまでの住宅施策の制度枠組みにつきまして、抜本的な改正が検討されているというふうにもお聞きしております。今後の本市の住宅計画のあり方につきましては、名古屋新世紀計画2010を基本としながらも、今後の法令改正の動向などを見きわめながら適切に対応してまいりたいと考えておりますので、よろしく御理解賜りたいと存じます。

◎斎藤亮人議員
住宅都市局長が基本計画についての重要性について言われたわけですけれども、しかし、先ほどから繰り返されて言われているのは、連携をしてやっていくんだということばかりを言っているわけです。しかし、どうやって連携するのかということが全然描かれていないわけであります。それが住宅基本計画で必要だというふうに言っているわけですから、これは早急に、平成17年度の間に住宅基本計画の策定準備を始める。そして、もう既に18年度には、先ほど言いましたように住宅基本法が策定されるかもしれないという状況であります。その意味でも、着実で、そしてまた万全な準備をした上で、名古屋市独自の、また地域に密着した住宅基本計画をつくっていただきたいと強く要望します。

投稿者 saito : 00:09